『血栓症』って聞いたことありませんか?
『血栓症』は血のかたまりが血管に詰まる病気です。
『突然死』、『エコノミー症候群』、『脳梗塞』、『心筋梗塞』などは血栓症に関係する病気です。
血栓症について原因・症状はどのようなものなのか?
血栓症はどのように予防するのか?
血栓症になってしまった時の治療は何をするのかをまとめてみました。
血栓症とはどんな病気!?
血栓症とは、何らかの原因で血管の中に血栓(血のかたまり)ができることで、血管が詰まって血流が滞る病気です。
血流が滞ることによって、その先へ血液が届かなくなることで、正常な機能が失われてしまいます。
場合によっては、部位や臓器が壊死したり、致命的な症状を発症したりします。
脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓などの病名を聞いたことありますか?
血栓症はこれらに代表される病気です。
手遅れになると命を奪うこともある怖い病気でもあります。
血栓症の特徴としては、以下のようなことがあげられます。
- しばしば突然発症します。(発症直前まで無症状のこともあります)
- しばしば不可逆的な機能障害が残ります。
- しばしば再発することがあります。(再発によって機能障害が進展します)
必ずではありませんが、しばしば発症します。
1. 突然発症
血管にできた血栓が血管からはがれることで、血管内を移動してより細い血管を詰まらせます。
それこそ、発症する1秒前まで無症状の人が発症します。
詰まった先によっては、一瞬にして重症の病気や死に至ることもあります。
2. 不可逆的な機能障害
血栓症発症後は、投薬、手術など治療を行なう必要があります。
でも、血栓が詰まる場所によっては、頑張って治療しても、身体に麻痺が残ったり、最悪は命を落とすこともあります。
3. 再発
適切な治療をしていても再発することがあります。
なお、再発を繰り返すと機能障害は進行してしまいます。
血栓症の原因はこれ!
メタボリックシンドロームって聞いたことありますよね。
運動不足や高カロリー摂取などが原因で内蔵に脂肪がたまり肥満を誘発します。
これは高血圧、脂質異常、糖尿病など、血管に影響を与える病気とも密接にかかわっています。
これらを要因として進行すると動脈硬化によって血管の内側がの壁がボロボロになり、傷つきやすくなります。
また、プラークと呼ばれる脂肪のかたまりが血管に付着することで、血管の通路が狭くなり血液の流れが悪くなります。
さらに、血流もドロドロになって血栓が生まれやすくなります。
すなわち、さまざまな要因によって、血液や血管、血流に異常があると血栓症を発症する恐れがあるのです。
- 血管:動脈硬化などによって血管が固くなり弾力がなくなり、血管壁にキズが付きます。
- 血液:血液が固まりやすい、溶けにくい性質になります。
- 血流:血流が障害されることで血液が停滞します。
同じ血栓症でも、動脈か静脈かで血栓の作られ方も違ってきます。
- 動脈血栓症:血流が早い動脈で起こる血栓症で、脳梗塞や心筋梗塞といった病気を引き起こすのがこの動脈血栓症です。
- 静脈血栓症:血流が遅い静脈で引き起こされる血栓症で、深部静脈血栓症、肺塞栓症を引き起こす血栓症です。
血栓症由来の病気
血栓症と言っても血栓がどこでできるかによって、病態や治療方法が異なってきます。
血流の早い環境下における血栓症を「動脈血栓症」といいます。
動脈血栓症は血小板の含有量が多い血小板血栓が形成されます。
代表的な疾患は、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症です。
一方、血流の遅い環境下における血栓症を「静脈血栓症」といいます。
静脈血栓症はフィブリンの含有量の多い凝固血栓が形成され多くの赤血球も巻き込まれます。
代表的な疾患は、深部静脈血栓症、肺塞栓、心房細動です。
心筋梗塞
心筋梗塞の主な原因は冠動脈の動脈硬化です。
冠動脈に動脈硬化が発症すると心臓に血液と酸素を送る冠動脈の壁に悪玉コレステロールがたまり、プラークと呼ばれるこぶを作ります。
このプラークによって血流が悪くなるのですが、プラークの被膜が破れることで血栓ができてしまい血管が詰まる状態が起きます。
血栓によって血管が詰まると、心筋に血液を送ることができない状態になり、心筋が酸素不足により壊死してしまいます。
脳梗塞
脳梗塞の大きな原因としては2つあります。
一つは、動脈硬化で、コレステロールや脂質でドロドロになった血液が付着して血管を詰まらせます。
もう一つは、不整脈、心筋梗塞などによってできた血栓がが脳まで達して血管をふさいでしまう状態です。
どちらにしても、血管が詰まった先の細胞は酸素が得られず壊死してしまいます。
閉塞性動脈硬化症
血管の動脈硬化がすすみ、血管が硬く細くなることで、血管が狭くなったり詰まったりして、十分な血流が保てなくなり、手先や足先へ栄養や酸素が十分に届かなくなる病気です。
血流が悪くなることで手足のしびれ、痛み、冷えを感じます。
症状が進行すると些細なキズが原因で潰瘍の発症や壊死することもあります。
深部静脈血栓症
手足の静脈に血栓ができる症状のことを言います。
「エコノミークラス症候群」という病名を聞いたことがある方が多いと思います。
航空機の座席の狭いエコノミークラスで長い時間、座ったままといった状況で起こることがあります。
肺塞栓症
肺塞栓症は主に脚にできた深部静脈血栓が、血流によって肺動脈まで運ばれてきた結果、肺動脈を詰まらせることで起こります。
血栓が肺動脈を塞ぐと、酸素を取り込めなくなったり、心臓から血液を押し出せなくなり、突然死の原因にもなることがあります。
心房細動
不整脈の中で最もよくあるものが心房細動で年齢とともに起こりやすくなります。
心房細動は心臓を動かす電気信号の波形が乱れている状態で、人によっては症状のない人も多くいます。
心房細動で問題となるのは脈が乱れることとで血栓ができ、この血栓がはがれ血管を閉塞させる可能性があることです。
心房細動についてはこちらの記事で詳しくまとめていますので、タップして確認してください。
血栓症にならないための予防法
病気を患っていなくても、日常生活において血栓症は起こる可能性がある病気です。
さらに、自覚症状もないまま知らずのうちに進行するサイレントキラーでもあります。
では、血栓症を予防するためにはどうすればよいでしょうか?
血栓症は大きく3つのパターンに分類できます。
- 生活習慣を背景にした血栓症。
- 年齢(特に60代以降の高齢)で起こりやすくなる血栓症。
- 病的な背景や年齢などに関係なく、環境次第で誰にでも起こり得る血栓症。
このパターンの予防としては以下のようになります。
1. 生活習慣病が背景
肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などを改善することが重要です。
すでに発症している人は治療が必須となります。
リスクのある人は適度な運動や栄養バランスのとれた食事などが必要です。
血液がサラサラになる食品の摂取も有効です。
2. 高齢者に起こりやすい
健康診断などで定期的に心電図検査を受け、心房細動の有無を確認していきます。
心房細動が見つかった場合は、血液を固まりにくくする抗凝固薬などで血栓症を予防します。
3. 病気や年齢に関係なく環境で起こる
エコノミー症候群に代表される予防で、長時間同じ姿勢でいることを避けます。
こまめに足を動かして、水分摂取を行います。
健康な人は血栓ができたとしても、自然に融解されます。
しかし、上記のようなリスクのある方は普段から予防が必要になります。
食事、運動、生活習慣の改善によって予防をしましょう。
まず、食事では下記に示すような食品を日常的に多く摂取することが大切です。
なお、サプリメントを利用するのも有効です。
- DHAを含む食べ物
サンマ、サバ等 - クエン酸を多く含む食べ物
トマト、酢、グレープフルーツ等 - ビタミンCを多く含む食べ物
たまねぎ、さつまいも、ピーマン、ナッツ類、イチゴ等 - ポリフェノールを多く含む食べ物
ブドウ等 - 納豆菌(ナットウキナーゼ)を多く含む食べ物
納豆
次に、発汗による水分不足から血液がドロドロになる可能性が高く、水分を十分に摂取することを推奨します。
特に、夏場はのどの渇きからビールを飲む方機会が増えますが、ビールは利尿作用が働くため脱水症状を促進させるので注意が必要です。
そして、適度な運動です。
ウォーキング、水泳、ジョギング、サイクリングなど無理のない範囲で日に30分以上日々継続することが望ましいです。
なお、長時間飛行機に搭乗する方は、足首を回したり、曲げ伸ばし、つま先の甲の曲げ伸ばし、ひざの曲げ伸ばしをすると良いようです。
それでも、血栓症の疑いが出た時は!?
血栓症と思わしき症状が出た場合には、すぐに医療機関で検査を行いましょう。
検査の結果、血栓ができている時は、早急な治療が必要になります。
抗血栓療法は、大きく抗血小板療法、抗凝固療法、血栓溶解療法に分けられます。
抗血小板療法:アスピリン、シロスタゾール等
血栓形成における血小板の凝集を抑制します。
動脈系の血栓に使用されます。
抗凝固療法:ワーファリン、プラザキサ、エリキュース等
凝固因子の働きを抑えフィブリン血栓の形成を抑制します。
静脈系の血流の遅いところで起こる血栓に使用されます。
下記ページにも関連情報として薬の情報があります。
薬は種類別に口コミ情報をまとめていますのでタップして確認してください。
- ワーファリン
- プラザキサ(ダビガトラン)
- エリキュース(アピキサバン)
血栓溶解療法
すでにできてしまった血栓を溶かし、次に血栓ができないようにしていく治療です。
基本は投薬治療になりますが、薬で血栓を取り除くことが難しい場合には血管内手術によって血栓を除去することもあります。
血栓症は定期的な健康診断や人間ドックを受診して予防しましょう。
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